• 「これでいい」という服は
    僕にとって最上の褒め言葉

  • 自由と独立の国、アメリカの開拓時代から歴史を作ってきたWOOLRICHと同じように、インディペンデントで自分らしく活躍を続ける各ジャンルのパイオニアたちの思いを伝えていく本企画。第1回目は書店COW BOOKSの設立者であり、ウェブメディア「くらしのきほん」の編集長を務める傍ら、多数の執筆も行うなど肩書きにとらわれない活躍を続ける松浦弥太郎氏が登場。

    ―着用されているWOOLRICHのシャツは30年近く愛用されているとのことですね。いつ、どこで購入されたんですか?

    これは僕が25歳くらいの時、ニューヨークの自然史博物館の近くの「Alice’s Underground」っていう古着屋さんで買いました。秋口だったんでニューヨークが思った以上に寒くて。お金がなかったから、できるだけ安く、でも暖かくて冬を越せる服が欲しかった。WOOLRICHだし、作りもいいなと思ったんですよね。その記憶が残っているので、思い入れもあるし、今も着ています。

  • ―当時からWOOLRICHはご存知だったんですね?

    はい、ダウンジャケットなどはすごくいいなと思っていました。このバッファローチェックもアイコニックですよね。手に入れてから25年も経っていますが、最近やっとしっくりくるようになった気がしています。若い頃って変にお洒落をしようとするけど、東京で着ていた服をニューヨークで着ると浮くんですよね。海外に行くといつも感じるんですが、みんなお洒落してないじゃないですか。洋服自体がその人に合ったスタイルになっている。だから東京でしていたお洒落が恥ずかしくなるんですよね。WOOLRICHには、いい意味でカッコよくない良さみたいなものはありますよね。“カッコよくないからカッコいい”みたいな。

  • でもただ野暮ったいだけではなく、クオリティを感じる質実剛健なもの。そんな長く着られるものの方が海外ではしっくりくるし、自分らしい。その時から自分の中のお洒落の価値観、概念が変わりましたね。こういうシャツって本当にスタンダードであり、ロングライフデザインと呼べるものだと思うんです。古くなるほどに良くなっていくというような。

    ―アメリカ開拓時代、鉄道を作る職員が着ていたんですよね

    ワークウェアですよね。モノとしてのクオリティが高いからワークウェアって惹かれます。昔から好きですね。アウトドアと考えると新素材の方がいいと思うんですけど、ワークって考えるとやっぱりこういうウールとかコットンのものがしっくり来ますね。

  • ―松浦さんが赤と黒のシャツを着ているイメージがなかったので、意外でした

    そうですね、でもアメリカの服は日常の道具感が強いですからね。元からそんなに色や柄を吟味して服を買うタイプではないので、このWOOLRICHのシャツはいい意味で「これでいいや」と思える服なんです。そう思える服ってワードローブの中でもありそうでないんですよね。どんな時でもサッと着られて、冬は暖かいし、軽いし、しっかりした作りだから、少し雑に扱っても心配ない。高級な服というわけでもないから、その辺に置いておいても別にいい。あまり洗濯しなくていいのもいいですね。不潔なものは着たくないけど、こういうアウターっぽいシャツってそんなに几帳面に洗濯しないじゃないですか。色々な意味で合理的で、自分が楽なんですよね。嫌なものは嫌だから、「これでいいや」って言うのは、僕にとって最上の選び方であり、褒め言葉なんです。

  • 後編に続く | Read Vol. 02
  • 松浦弥太郎 「暮しの手帖」前編集長、ウェブメディア「くらしのきほん」編集長。中目黒のセレクトブックストア「COW BOOKS」代表としても活動中。暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書多数。雑誌連載、ラジオ出演、講演会を行う。アメリカに憧れ、十代の頃単身渡米した経験を持つ。